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生成AI解説:CoT(Chain-of-Thought)、推論能力を飛躍させた「思考の連鎖」

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 👥この記事は、こんな方におすすめ:
  • 生成AI誕生以降のすさまじい進化の流れを短時間で把握したい
  • 生成AIが結果を生成するメカニズムを理解し「なぜ嘘をつくのか」を知りたい
  • 初期の生成AIと推論型のAI(CoT、リーゾニング)の違いを知りたい
📊 記事のレベル:
難しさ: (やや難しい)

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はじめに

大規模言語モデル(LLM)が文脈を扱えるようになった次のステップとして登場したのが、Chain of Thought(思考の連鎖)です。 これは、AIが「答えだけを出す」のではなく、「その答えに至るまでの考え方」も文章として示す仕組みです。 人間が問題を解くときに「まずAを確認して、次にBを考える」といった段階的な思考を模倣する点が特徴です。

トップ記事「AI革命の幕開け ― 深層学習から生成AIへ」で紹介したCoTについて、その特徴と進化のポイントを見ていきましょう。

CoTの仕組み ― 思考プロセスを言語化する技術

従来のAIは、入力された質問に対して「最も確からしい答え」を直接出力する方式でした。 一方、Chain of Thought(CoT)を取り入れたAIは、答えに至るまでの思考プロセスを明示します。
例えば、「3, 5, 7, …の順に並ぶ数字の列があります。10番目の数字は何でしょうか?」という質問に対して、従来のAIは即座に「21」とだけ答えます。

これに対し、Chain of Thoughtを取り入れたAIは、次のように段階的な説明を行います。

この数列「3, 5, 7, …」は、初項が3、公差が2の等差数列です。
等差数列の一般項は次の式で表されます:
 An = A1 + ( n – 1 ) × d
ここで、A1 = 3、d = 2、n = 10 なので、
A10 = 3 + (10 – 1) × 2 = 21。
よって、10番目の数字は21です。

このように、途中の思考手順を経て答えを導くことで、AIの推論は透明性を増し、より人間に近い形で説明可能になります。 結果として、CoT搭載AIは数学や推理などの複雑な課題にも段階的にアプローチできるようになり、 単なる知識問答を超えて、論理的な思考を伴う問題解決が可能になっています。

項目従来のAIChain of Thought搭載AI
回答形式結果のみを出力思考のステップを経て結果を出力
透明性なぜその答えに至ったか分かりにくい推論過程を提示し、理由を説明できる
対応できる問題単純な知識問答中心論理・計算・推理を含む複雑問題に対応

CoTの進化は、従来のLLMのネットワークに新たな構造を導入することにより生み出されているわけではありません。主要な違いは学習のさせ方です。 AIが出力する結果に「答え」そのものではなく、「思考の過程」を出力するよう学習しています。以下がCoTの学習のフローです。

  • ① 思考を含む教師データの作成: 「問題 → 考え方 → 答え」という構成を持つデータを大量に用意し、 モデルに「どのような順番で考えを言葉にするか」を学ばせます。 これにより、推論の過程を自然に言語化できるようになります。
  • ② 段階的学習(Step-by-step Fine-tuning): まず通常の質問応答や知識表現を学習し、そのあとで「思考を含む回答」だけを抜き出して再学習します。 この工程を経ることで、モデルは答えを出す前に「考える文脈」を自然に出力するようになります。
  • ③ 人間フィードバック(RLHF:Reinforcement Learning from Human Feedback): モデルが生成した思考文の中から、人間が「わかりやすく論理的」と評価したものを報酬として再学習します。 このプロセスによって、AIの“考え方の質”が高まります。

このように、CoTは「ネットワーク構造を変える」のではなく、学習方法を改良することによって実現しています。 人間の思考手順を言語として再現するよう訓練された結果、AIが推論しているように見える文章を生成するようになっています。

[注意事項]

CoTのプロセスでも必ず正しい答えが出るわけではありません。推論の途中で前提を誤解すると、結果も間違ってしまいます。

誤った答えの例:
「Aさんは毎日散歩をしています。散歩をする人は健康的です。Aさんは健康ですか?」
この問いに対して、「散歩をする人は健康」という一般論をAさんに適用してしまうと、「Aさんは健康です」と必ずしも正しくない答えを導き出してしまうことがあります。
ただ、当初のCoTは誤回答を導出することがありましたが、近年のAIでは、論理を正しく把握し、「散歩をする人=健康な人とは限らない」と回答してくれるものが多いです。

主要サービス比較 ― ChatGPT・Gemini・CopilotのCoT対応

① ChatGPT(OpenAI)
OpenAIのChatGPTは、Chain of Thoughtの考え方を積極的に採用しています。 「理由を説明して」と尋ねると、答えに至るステップを自然言語で説明し、 会話型AIの中でも特に「思考を言語化する力」が高いモデルです。

② Gemini(Google)
GoogleのAI「Gemini」は、ブラウザでもスマートフォンアプリでも利用可能です。 CoTの考え方を応用し、検索・推論・文章作成を統合的に行います。検索エンジンの知識とLLMの推論を組み合わせ、 質問に対して「過程を説明しながら」回答を導くことができます。

③ Copilot(Microsoft)
Microsoftの「Copilot」は、Bing検索やWindows 11、Office製品に統合されたAIアシスタントです。 特にWordやExcelでは、ユーザーの操作意図を推論し、提案や文書生成を段階的に行います。 CoTの考え方を取り入れることで、ただ指示に従うだけでなく、文脈を踏まえて“考えながら提案する”動きを実現しています。

今後の展望 ― 推論型AIとエージェント化への進化

今後のCoT(Chain of Thought)は、単に「思考手順を説明する技術」から、 より構造的で柔軟な推論プロセスを扱う技術へと進化していくと考えられます。

近年では、1つの問いに対して複数の思考経路を生成し、 互いに検証・統合するマルチパス推論(Reasoning)や、 途中の推論を他のAIモデルと共有する協調型CoTの研究が進んでいます。 これにより、より複雑な問題に対しても、一貫性のある結論を導けるようになります。

さらに、CoTは今後、知識・計算・論理の3要素を組み合わせた“総合推論”の基盤技術として発展していくでしょう。 AIが「なぜその答えに至ったのか」を説明しながら、複数の視点で考えられるようになる ― それが次世代のCoTの方向性です。

✅次の章では、テキスト・画像・音声・映像など異なる情報形式(モード)を組み合わせて扱えるマルチモーダルAIを紹介しています。

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生成AI技術解説:Multimodal AI(マルチモーダルAI)
Multimodal AI(マルチモーダルAI)の仕組みマルチモーダルAIの仕組み、進化のポイントなどを詳しく解説
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